学生時代に三年間暮らした街は、東急の世田谷線沿線にあった。
三軒茶屋と下高井戸を結び、途中で小田急線にも乗り換えられるので、案外便利な路線である。最近でこそ、鉄道の良さが認識されるようになり、各地の「マイナー」な私鉄がクローズアップされることも多くなったが、昭和50年代の学生にはほとんど見向きもされないというか、「車に乗ること」「良い車を所有すること」が「ステータス」で「モテる」ための必須条件だとされていた。
そういう風潮に乗ることのなかった(必要もなかった)私は、当時は世田谷線の定期券をフルに活用していた。ちなみに均一料金制で、当時は100円で乗ることができた。どの駅も大げさな建物はなくて、かわいらしい改札口だけがあった。住宅街を縫うように、家々の軒先をかすめて、ゆっくり走っていた印象がある。
昨年だったか、テレビで世田谷線や江ノ電を紹介する企画があった。緑色の丸っこいデザインだった車体が一新され、見違えた。この夏、所用で上京する機会が二度ある。時間を取って、世田谷線に乗りに行こうと思っている。